2018-01-01から1年間の記事一覧

行き止まり

おれが生まれて最初に見たものは光だった筈だ。たとえそれが外連味のない照らしすぎる分娩室の照明灯であったにせよ、おれはたしかに光を見たに違いない。医者は特に感動もしてない。彼にとっては業務上のよくある光景で、正直に言えば痛みに悶える腹の膨れ…

3月24日のこと

北浦和に用があり、南浦和で乗り換えるため府中本町から武蔵野線に乗った。休日とはいえ昼過ぎの始発駅なので車内は閑散としており、他の乗客と睨めっこをすることもなく、平和に楽々と端の座席に座れた。数分後、電車が発進すると車内に風が吹いた。空調の…

1782文字

Tは彼の友人が運転する車の後部座席に凭れ、通り過ぎる街の風景を見つめている。赤信号で停車すると、歩道の往来を眺めながら、パッとしないやつばっかりだと思う。口には出さず、人々の顔を仔細に観察しては、パッとしねえ、パッとしねえと繰り返し思う。…

頃日の状態

この頃、自分の中であらゆる対立した感情やそれを統べる考えやそうした構造に与しない微妙な感覚や吐き気や安楽や失望や哄笑やカウボーイやノマドや田舎者や善人や白痴や男娼や少女やスカート捲りや詩や散文や感嘆詞や略語や和製英語や三角や点や線や歪みや…